2014/08/01

「オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-」 @国立新美術館

「オルセー美術館展」チラシ表(笛を吹く少年 byマネ)

国立新美術館に「オルセー美術館展」を見に行ってきました。

午前中(お昼少し前くらい)に着いたのですが、思った以上に入口付近が人で賑わっていて、もうちょっと時間をずらすか夕方の方が空いていたかも・・・と、やや後悔しつつも入場。

実際には最初のエリア周辺がすごく混んでいたのですが、そこだけでした。
特にマネの「笛を吹く少年」とミレーの「晩鐘」。
そのあたりを過ぎると人がばらけて行き、かなり見やすくなりました。

後半に展示されているモネの「草上の昼食」は初来日でチラシ裏にも載っているけど、ここまで来ると鑑賞する人もまばらになり、ゆっくり見ることができました。(作品は大きいので見やすかったです。単にタイミングが良かっただけかもしれませんが)

「オルセー美術館展」チラシ裏(草上の昼食 byモネ)

これがマネの「草上の昼食」だったらまた状況は違っていたのかもしれないと思いながら、やっぱりモネは光の表現がさりげなく上手いな~と、近くからも遠くからも鑑賞。
木陰の外側もそうだけど、まだ食べ物が広げられていないところに差し込む陽の光とか。

しかし、傷みがなくて切り取らずに済んでいたら、もっと迫力あったのでしょうね・・・。

ちなみに会場にはセザンヌの「草上の昼食」も展示されていました。小さな作品です。

印象派の作品は最近になって良いところが見えるようになってきたけど(作品にもよる)、全体的にボヤッとした作風が個人的に苦手で・・・。なので、「印象派」というだけで何故たくさんの人が集まるのか理由が今でもよくわからない。カテゴリとして馴染みがあるから?

改めて考えるに、印象派の展覧会に行くと決まって混雑しているので、ゆっくり作品を見ることが出来なかったことも、苦手意識を持つ原因のひとつだったかもしれないなと。

てもそんな印象派を代表するモネの作品で、目を惹くものが多かったのが今回の展覧会。
例えば「かささぎ」、「死の床のカミーユ」、「アパルトマンの一隅」など。

クロード・モネ「かささぎ」ポストカードより
クロード・モネ 《かささぎ》 1868-69年 油彩/カンヴァス 89×130cm

「かささぎ」は「草上の昼食」と同様にモネらしい光の表現に感心しながら見たのですが、「アパルトマンの一隅」はモネはこんな作品も描いていたのか~と思うような不思議な雰囲気の作品でした。光というより色彩の表現が極端で何だかシュールな印象。

クロード・モネ「アパルトマンの一隅」ポストカードより
【クロード・モネ 《アパルトマンの一隅》 1875年 油彩/カンヴァス 81.5×60cm

そういえば「4章 裸体」の展示室にカバネルの「ヴィーナスの誕生」があったのですが、オリジナルを見るのは今回がお初でした。

過去、2009年に横浜美術館で開催された「フランス絵画の19世紀」で見たのは、複製画にカバネルが手を加えた作品だったようだし、その前の年に今は閉館されたユニマット美術館で見たものは今回のオルセーのよりもサイズが小さかったような記憶が。(ユニマットの作品リストには、《アレクサンドル・カバネル ヴィーナスの誕生 c. 1863 》と書かれていたけど、今はどこにあるのだろう?)

そういえばカバネルの作品を見ているとき、近くにいた小学生くらいの少女が母親に「私、この絵好き!」と言っているのが聞こえました。
天使がいたり色合いが柔らかかったりで、官能的ではありますが好かれる作品ですね。
改めて近くで見ると、「天使の目がいっちゃってるな~」と思ってしまいましたけど・・・。

さて、今回の「オルセー美術館展」は、マネに始まりマネで締めているのも見どころでした。(実はそれもあって、混んでいることを覚悟で見に行くことにしたのです)

最初の「1章 マネ、新しい絵画」の展示室に、チラシにも使われている「笛を吹く少年」がいます。実物を見るのは初めてでしたが、意外とサイズが大きめ。ほぼ等身大なのかな?

大きいので離れたところからもある程度は見えるのですが、如何せんお客さんが群がっているため足元までは見えず。この機会に全体を見ておくため、前のお客さんが流れるのを待ちながら、近くまで進んで見ました。

では、ここで「笛を吹く少年」にまつわる個人的なエピソードをひとつ。

私は子供の頃から美術の教科書などを見るのが好きで、学年が違えば載っている作品も違うだろうと、姉に美術の教科書を借りたことがあるのですが、その中に「笛を吹く少年」が掲載されていました。そしてそのキャプションを見ると「笛を吹く少年  マネ」とあるところ、タイトルと作者の名前の間に姉が書いたのか、手書きで 「の」 が書き足されていました。

「笛を吹く少年 の マネ」・・・。

それ以後、私はこの絵を見ると、脳内で「笛を吹く少年のマネ(真似)」というタイトルに変換されてしまうようになったのです。人前で言ったことは過去に一度しかありませんが。

そんな「笛を吹く少年」の実物を見たかったのもありましたが、実はマネの晩年の作品「ロシュフォールの逃亡」も見たかったのです。こちらは最後の展示室 「9章 円熟期のマネ」 のエリアに展示されていました。

エドゥアール・マネ 「ロシュフォールの逃亡」ポストカードより
【エドゥアール・マネ 《ロシュフォールの逃亡》 1881年頃 油彩/カンヴァス 79×72cm

実際に見た「ロシュフォールの逃亡」はイメージしていたよりも小さな作品でした。
それに縦長の作品だと思い込んでいたけど、かなり正方形に近かったです(79x72)。

でもこの構図がすごく印象深くて。ほとんどが海なのに全部じゃないところとか波の感じ。
海の色もいい。もっと海が広くて小舟がすごく小さかったら絶望感が大きくなりそうだけど、そうじゃないバランス感が絶妙で。小舟の中の様子まで何となく伝わってきそう・・・。

円熟期のマネの展示室にあった中では、「アスパラガス」という作品のエピソードもユーモアがあって面白かった。この作品はミニ図録の裏表紙にも使われています。

ショップでは、記事内に掲載した作品の分を含めて、何枚かのポストカードと一緒にミニサイズの図録を購入しました。

「オルセー美術館展」ミニ図録 表紙

最近はよく雑誌などでも持ち歩き用にミニサイズを販売しているのを見かけますが、展覧会の図録にミニサイズを作るというのは良いアイディアだなと思いました。

また、作品リストのブックレットに「1874年の画家たち」という相関図が載っていたのも参考になりました。マネが印象派の画家たちとは違う立ち位置にいたことがわかったし。(マネは印象派の画家たちと交流はあったが、印象派展へは一度も出品しなかった等)

普段は名画がたくさん展示される展覧会(例えば印象派の展覧会など)は混むのが当たり前なので行かないことが多いのですが、オルセー美術館展は良かったです。
記事に書いた以外にも、印象に残る作品がいろいろありました。

これからも混雑に負けずに時間調整などして、美術展に足を運ぶようにしたいものです。

●オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-
 会 期: 2014年7月9日(水)~2014年10月20日(月)
 会 場: 国立新美術館 企画展示室2E
 時 間: 10:00~18:00 ※金曜日は20:00まで
 料 金: 一般(当日) 1,600円
 特集サイト: http://orsay2014.jp/