2015/04/22

「マグリット展」@国立新美術館

マグリット展チラシ「ゴルコンダ」

“超現実へようこそ。20世紀美術の巨匠、13年ぶりの大回顧展。”

国立新美術館にて開催の「マグリット展」に行ってきました。

たまたま休みが取れた平日の午前中に行ったこともあり、思ったよりもゆったりと見ることが出来ました。(この日も「ルーヴル美術館展」の方が混んでいたように思います)

今回は“大回顧展”と銘打っているとおり、130点余りの作品が展示された大規模な展覧会となっていて、未見の作品も結構あって、見応えもありました。

マグリット展チラシ見開き

実は今回初めて「音声ガイド」を借りてみました。

アンドレ・スーリ、エリック・サティ、アルベール・アイブレクツの楽曲が使われていて、確かにサティはマグリットに合うかも・・・と思いましたが、グノシエンヌは第2番、ジムノペディは第3番と、あえてなのかよく知られていると思われる1番を外した選曲が心憎いなと。

音声ガイドは普段なら何となく見過ごしてしまうポイントが紹介されたりするので、「あ、ホントだ・・・」と思うような発見もあり、面白かったです。

展示は時代に沿っているだけでなく、同じようなテーマやモチーフの作品を並べて展示する傾向があり、比較という点では良かったけど世間的には賛否あるかもしれません。

例えばチラシ裏に使われている「空の鳥」の隣には、あの「大家族」が展示されていました。
(前回「大家族」は名古屋会場のみの展示でした)

マグリット展チラシ裏「空の鳥」

この「空の鳥」も改めてよく見ると、右下に夜の滑走路が描かれていて、誘導灯が点灯しているのです。夜の風景に青空の鳥・・・、改めてじっと見ているとすごい風景だなと。

他にも「恋人たち」も2作品並べて展示されていたり、石のモチーフが使われている作品もまとめて展示されていたり・・・。

そういえばマグリットの作品としてよく見かける「白紙委任状」、私が行った時はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵のものでしたが、後期は宮崎県立美術館所蔵の「白紙委任状」が展示されるようです。

他にも東京会場でしか見ることの出来ない作品もあれば、京都会場にしか展示されない作品もあります(例えば「ピレネーの城」など)。

気になる作品はいろいろあったのですが、マグリットが自宅で亡くなった時にイーゼルに残されていたという「テーブルにつく男」という木炭画が展示されていたことも印象的でした。

確かイーゼルごと展示されていて、そのイーゼルはマグリットが実際に使ったものであるというキャプションがあったと思います。

それを見ていると「透視」に描かれたイーゼルが頭に浮かび、「あれか?」と。
まったく同じでなくても、少なくとも同じデザインのイーゼルだったと記憶。

他にちょっとモヤッとしたので書いておこうと思ったのが「アルンハイムの地所」という作品について。タイトルは「アルンハイムの領地」と訳されることも。

実は以前このブログで「光の帝国」について書いた記事があり、

 ・「光の帝国」を見くらべつつ、13年前の「マグリット展」を振り返る(2015/03/01)

そこに画像を載せているのですが、2002年の展開会のチラシにも使われました。

今回その「アルンハイムの地所」も展示されていたのですが、キャプションに書かれていた文章を以下に一部抜粋します。(図録にも掲載)

「(前略)それは、広大な山脈の形態が、翼を広げた鷲の形に、まさに一致している光景です。われわれはそれを、建物の開口部から見ることができ、その端には卵が2個、置かれています」

が、どう見ても絵に描かれた卵は2個でなく 3個なのです。
私はマグリットに騙されているのだろうか?と思いつつ、卵を凝視してしまいました。

で、「これはもしや」と思い当たったのが、同じテーマで何作も描くという画家の習性。
それで自宅に帰ってから2002年のチラシを見返してみましたが、やっぱり卵は3個。

でもその時に気がついたのです。「何かが違う!」

実は2002年のチラシと今回のマグリット展に展示されている「アルンハイムの地所」では、空に浮かぶ月の向きが逆になっていたのです。さらにネットで検索してみると、卵2個バージョンの作品も見つかりました。

今回のマグリット展では作品のキャプション(図録にも掲載)は解説というより、マグリットの言葉を引用しているものが多いので、多分ですが、同名で別バージョンの作品に言及した言葉を使っているのではないかと。

ちなみに2002年の図録に掲載されている解説文によると、
「この作品は1938年描かれた同名の、ただし横長の作品ヴァージョンである。 (中略)またそれより以前1936年には<先駆者>というタイトルで、卵がないタイプのものが描かれている。」
とあって、同じテーマ(タイトル)で複数作品描かれていることがわかり、やっと気持ちが落ち着いたのでした。

あとは会場でホームビデオが上映されていたのを見たのですが、それを見ていると同じシュルレアリストでも例えばダリなどはわかりやすく変な人ですが、マグリットは静かに変な人だなと思いました。

マグリットは一見、服装もちゃんとしているし紳士的なイメージなのですが、いつもちゃんとしているのに変なことをしているような映像で、真面目にふざけているってある意味狂気だな~と、何となく思ったり。

マグリット展開催の国立新美術館へ

グッズは思ったよりも欲しいと思うものがなく、図録だけ購入。
図録もポストカードも、全体的に彩度やや低めでコントラスト強めな印象。

展示会場に入らなくてもグッズコーナーでは購入可能なので、会期中にまた美術館近くに行くことがあれば立ち寄ってみるかもですが。

しかしこれだけ見ても、もっと見たいマグリット作品。
やっぱりベルギーのマグリット美術館に行くしかないのでしょうか。
でも、どうせ行くならその時は、世界のどこかでマグリット展が開催されていない時を狙わないとダメですね。

マグリット展チラシ「光の帝国Ⅱ」

●マグリット展
 期 間: 2015年3月25日(水)~2015年6月29日(月)
 会 場: 国立新美術館
 公式サイト: http://magritte2015.jp/